漫画レビュー

【美味しんぼ】土鍋の力

美味しんぼを読んでみたいけど
「巻数が多すぎて読むのに時間がかかりすぎる」と
お悩みの方は多いのではないでしょうか。

そんな令和な人におすすめなのが、
本ブログの美味しんぼまとめです。

各回のまとめを覚えれば時間短縮はもちろん、
日常生活でするりと美味しんぼの名言を
活用することが可能になります。
もっと効率よく美味しんぼから蘊蓄を吸収したい方や、
大昔に美味しんぼを読んで記憶を取り戻したい方は
ぜひ参考にしてください。


今日覚えたい美味しんぼ

純金鍋は成金の証拠であること

純金は特性上鍋にはもってこいのこと

30年以上炊き続けた土鍋には
出汁が染み込むこと

要点は抑えましたね、さあ行きましょう。

物語冒頭

土鍋の力、この回は私も特に記憶している回でして、
 
TV番組所さんの目がテンでも特集された回になります。

今回、東西新聞と懇意にしている運輸会社の鶴森社長から、
究極のメニューつくりに関して
ぜひ食事を招待したいというところから話は始まります。
 
ふぐ懐石で接待を受ける東西新聞社一行、
しかしどうやら招待されたには訳がありました。

鶴森社長は成金の粋を尽くしたような社長。
満を持して渾身の純金の鍋を披露します。
 
みなさんご存じの通り、
金は金属の中でも特に安定した素材であり、
 
なおかつ熱伝導率が高いことから、
 
調理器具として素材の味を壊さない
最良の素材と考えられています。

ただ、金を調理器具にするとなると相応の値段になるため、
これまで金を調理器具にするといったことは
一般的でないことはみなさんの想像に及ぶところでしょう。

しかし、ここにその新境地へ挑む男がいました。
 
  
出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
3巻3話より
実にいい気持ちだ、
現実で死ぬまでに使ってみたいワードセンス

全ては自分の権威を示すため、

大名でも何でも
純金の鍋で鍋料理に興じた大名がいるなら出てこい。

実にいい気持ちだ!と
見ているこちらまで気持ちいいくらいまでの
成金ムーブを炸裂させます。

が、しかし今日の食事会はさらに先がありました。

なんとこの成金 鶴森社長、
薄々純金鍋になにか疑問を感じていた模様、

究極のメニューを担当する食に精通したメンバーなら
この疑問も解消してくれるはず。

その一心でこのモヤモヤの正体の解決に吐露します。

山岡、成金社長を既に見透かしていました。

むしろ成金から羽化するチャンスだと煽り散らします。

出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
3巻3話より

久々の山岡問答が炸裂します。

明日、またこの部屋を抑えておいてください 
あなたの疑問を解消して差し上げましょう。

この時点で既に術中の領域にいる鶴森社長、
返す刀で明日の部屋を予約したことでしょう。

土鍋の真価

山岡と栗田はその足で東京は
上野のすっぽん料理屋へ赴きます。

お決まりの展開、
店主が山岡と懇意の条件が成立します。

このパターンは現状勝率100% 
安心してみていられます。

山岡は純金鍋に打ち勝つ唯一の鍋 

それはすっぽん料理屋の日常使いで鍛え上げられた
30年物の土鍋を借り受けます。

純金鍋に相対するのはまさかの土鍋・・・。

その鍋をもって翌日、
鶴森社長を納得させる料理をもてなすことになります。

水と醤油で炊いただけの雑炊

待ちに待った翌日、どんな料理をと期待する一同、
 
なんとその料理とは土鍋を使った雑炊でした。
 
しかも出汁もとらない水と醤油で炊いた雑炊です。
 
しかし、そこは30年前の土鍋・・・・
食通たちを唸らせるには十分な説得力がありました。

なんと土鍋には30年間で積み重ねたすっぽんの出汁がしみ込んでおり
 
出汁を入れずともすっぽんの出汁がにじみ出る魔法の土鍋でした。
 


出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
3巻3話より

料理とは人間と調理器具の創造


この話、実は冒頭にお話しした、
所さんの目がテンで検証された過去があります。
ネットで検索してみたもののヒットしなかったのですが
当時の検証では
確かにすっぽんのうまみは出汁として出ている。
ただし非常に微細なうまみで鋭敏な舌を持った
人間のみが味わえるものだ、
というものだと記憶しています。
 
最後の締めに登場人物たちは鋭敏な舌を持った
特別な人たちだったんですね、という話で
締めくくられたのを覚えています。
(確か20年以上前・・・)

これは料理に限らず人間にも言われることで、
 
特に私のような男社会で生活するサラリーマン全般に
言えることですが、
 
仕事人の人間味は仕事でどんな波を乗り越えてきたかで
味わいが決まります。

ここでも同じことが言えます。
 
真摯に土鍋とすっぽんに向き合った職人のもとにだけ
たどり着く境地、
 
調理器具の特性だけでは決して安易に到達できない境地を
山岡は伝えます。

出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
3巻3話より

この回のいいところは鶴森社長の人を見る目です。

やはりこのレベルの成金社長にともなると、
意見するような部下はいないのでしょう。

そこに事実をベースにして本質を問う山岡、
本来であれば自分の年の半分程度の若造、
となるところですが、最後は山岡のいわんとする
純金では出せない料理人と鍋の熟成、
つまり時間がなければたどり着けない領域があることを
理解し、もう1段階人間を成長させてくれたことに
感謝します。

これこそ器の大きな男を学べる回と私は思います。