漫画レビュー

【美味しんぼ】和菓子の創意

美味しんぼを読んでみたいけど
「巻数が多すぎて読むのに時間がかかりすぎる」と
お悩みの方は多いのではないでしょうか。

そんな令和な人におすすめなのが、
本ブログの美味しんぼまとめです。

各回のまとめを覚えれば時間短縮はもちろん、
日常生活でするりと美味しんぼの名言を
活用することが可能になります。
もっと効率よく美味しんぼから蘊蓄を吸収したい方や、
大昔に美味しんぼを読んで記憶を取り戻したい方は
ぜひ参考にしてください。


今日覚えたい美味しんぼ

和三盆は香川や徳島で取れる砂糖のこと

京都人のプライドは
フランス人に匹敵すること

京都人は能力があるものは
正当に評価すること

要点は抑えましたね、さあ行きましょう。

物語冒頭

今回は美味しんぼの準レギュラーであり、
 
海原雄山・山岡士郎の師匠 唐山陶人先生初登場回です。

数寄屋通りを歩く山岡一行、
 
そこに和菓子屋が新しくできていることをみると
 
今日は和菓子と日本茶で一杯やるか、と店に入ります。

店は最近できたばかり 
ようやく半年を迎えた若い店主と妻が切り盛りする
和菓子屋でした。
 
  
出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
3巻2話より


山岡はそこでおもむろに干し菓子を味見させてくれ、
といい一つつまむと
申し分のない仕事ぶりであることを
評価します。

東西新聞社メンバーには酒飲みに甘味の味がわかるか、
とぼろくそに酷評されながら
山岡は和三盆と砂糖の違いを講釈します。

和三盆とは通常の精製砂糖と異なる甘味で
香川や徳島で取れる砂糖のことで

和を体現したような食材であると説明します。

この説明を聞いただけで食べてみたい欲求にかられます。

美味しんぼは海原雄山との戦いやとんでも回が
話題になることが多いですが、
個人的にはこういう山岡が料理を評価して、
料理の薀蓄を嫌味なく説明する回が一番好きです。

しかしそれと同時に山岡はこの品質で
この値段では採算が取れないことも見抜きます。

店主はそれは承知の上、しかし和菓子は菓子なんだから
普段から食べれるような手の届く本物を客に届けたい
という信念をもっています。

それに感化された山岡 
恒例のいいおせっかいの流れに持ち込み、
和菓子屋の贔屓になるような人間を紹介します。

しかしその人間、本当に山岡の人脈には呆れます。

これまで老舗の主人や牧場主など数々の有力者と
面識があるのは承知していましたが、
なんと今回の相手は人間国宝でした。

登場 人間国宝 唐山陶人

出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
3巻2話より
口が半開きな人間国宝

陶芸家の唐山陶人先生だよ、と軽く紹介します。

それもそのはず、
陶人先生は海原雄山の陶芸の師匠 
山岡士郎は孫同然という関係でした。

山岡はこのネットワークを駆使し、
陶人先生の客人で和菓子をよく扱うであろう、
京都の茶道家元を紹介してもらいます。

しかしさすがは京都人 一筋縄ではいきません。

令和の今でも京都人クオリティは幅を利かせていますが、
この昭和の漫画でも京都人らしさをよく捉えています。

私は地元が京都とは程遠いですが、
子供の頃にこの話を読んで京都人の恐ろしさを学びました。

出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
3巻2話より

この上げて下げる京都おいでやす作法、
ぐうの音もでません。

お前の腕は認める 
でも京都では少し歩けばすぐ見つかるレベルやで、
と切り捨てます。

これは京都人のなせる業なのか、
 
はたまた芸術の奴隷と化した人間だけが
たどり着ける境地なのか。

27歳の職人には非常に厳しい評価でした。

しかし久々に自分でこの話を読み返してみると、
不思議と当時とは違う感覚を覚えます。

私も今、仕事で部下を何人かもつ身ですが、
この話と同様部下にはとにかく早く仕事を覚えて

自分が第一人者になるような仕事を手に入れろ、
とにかく仕事は椅子取りゲームで椅子にさえ
座ってしまえば道は開けると伝えています。

私はただのサラリーマンですが、
何事も第一人者になるとならないでは
業界の評価というのは能力の如何にかかわらず
変わってきます。

恐らくこの京都人もそういいたいのだと解釈しました。

京都人は去り際に、その若さでこの腕は前は並大抵やない 
 
新しい味の開拓をまずはやってみなはれ、と激励。
 
最後に上げて終わる京都人 
俺たちのステージに早く上がって来いと
いわんばかりの所作です。

伝統の世界に新しい味を見出す

それからというもの和菓子屋の主人は
試行錯誤を重ねますが、
和菓子こそ日本料理の伝統芸です。

歴史がそこらのものとは違います。
 
そんな洗練された世界で新しい料理を思いつく、
並大抵のことではありません。
 
山岡も支援するもののなかなか道は開けない様子・・・。
 
そんな中、
居酒屋でヤケをした帰りにすれ違った酔っぱらいの一言から
山岡はアイディアを爆発させます。
 
酔っぱらいは最近総入れ歯にしたことによって
食べ物を味わうのは舌だけじゃなく
上顎、下顎でも感じていたんだ、
最近じゃ入れ歯のせいで味わうも何もないんだと
嘆いていた会話を見逃しませんでした。
 
舌だけじゃなく、口の中で味わう和菓子・・・・、
奈良の吉野葛にヒントはありました。
 
翌日、奈良へ向かい最上級の吉野葛をじかに触れ、
このインスピレーションを基に和菓子職人は
次のステージへ踏み出します。


出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
3巻2話より

和菓子と吉野葛の融合

見出した料理は、吉野葛で餡を覆ったものでした。

吉野葛の触感で口の中の感覚を刺激し、
餡は絶妙のバランスで和三盆の香りをまとわせ、
触覚・嗅覚・味覚を刺激する新たな境地です。
 
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出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
3巻2話より

これには京都人も絶賛の嵐 

さすが京都人、
能力のあるものには素直に評価する 
これぞ京の都の嗜みよ。

最後に家元から最大の賛辞 自分の名前から一文字とり、
その触感の儚さから暖雪という銘を受けます。

今回のような誰もがWINWINになる回を描かせた
美味しんぼ回は数多くありますが、
読んだ後はとても晴れやかなものばかりです。

なにより才能に溺れない若い職人が
真摯に自分の仕事を向き合う姿というのが
胸打たれます。