漫画レビュー

【美味しんぼ】日本の素材

美味しんぼを読んでみたいけど
「巻数が多すぎて読むのに時間がかかりすぎる」と
お悩みの方は多いのではないでしょうか。

そんな令和な人におすすめなのが、
本ブログの美味しんぼまとめです。

各回のまとめを覚えれば時間短縮はもちろん、
日常生活でするりと美味しんぼの名言を
活用することが可能になります。
もっと効率よく美味しんぼから蘊蓄を吸収したい方や、
大昔に美味しんぼを読んで記憶を取り戻したい方は
ぜひ参考にしてください。



今日覚えたい美味しんぼ

日本人が作るフレンチには
風土が感じられないこと

フレンチのソースはシェフの命であること

牛肉に一番合うソースは醤油であること

要点は抑えましたね、さあ行きましょう。

物語冒頭

今回はフランスの大重鎮が日本で大暴れする回です。

昭和の時代に作成された美味しんぼ 
 
時代背景も相まって日本の海外信仰、
とりわけフランス料理信仰が色濃い内容になっています。

今日の主役はジャン・モレル氏。
フランスで著名な料理批評家であり、
 
モレル氏に評価されること
つまりレストランに星がつくことを意味します。
 
今回はそんなジャン・モレル氏を招いた食事会です。
 
食事会の中、
大原社主は山岡に究極のメニューの進捗について伺います。
 
山岡は究極のメニュー作りに一本背骨を通したい 
その意味では本物の材料があってこその原理原則を
貫きたいと語ります。
 
そんな話をする中、食事会が始まります。
今回は東京の名シェフと呼ばれるフランス料理人を集めて
モレル氏に日本のフレンチを賞味いただくという趣向です。

日本の名シェフが繰り出す数々の自信作
エクルヴィスのサラダからはじまり、
 
フォアグラ、鴨、
ウサギのテリーヌ、スズキのパイ皮包み等々
本国フランス顔負けの料理を振る舞います。
 
しかし、モレル氏 
どうにも思うところがある様子です。

モレル氏は感想を聞かれ、
顔色とは裏腹に実に見事な料理だと賛辞を送ります。

しかし見事であると同時に最低の料理だと言います。
  
出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
2巻4話より

理由は明白でした。

出された料理は全てフランスの国で生まれた料理を
日本人がコピーした物まね料理。

料理から日本の風土が全く感じられない。

料理とは芸術であり、
芸術家の絵画を模倣だけしたものに価値があるのかと
続けます。

これは私の好きな漫画
「僕はビートルズ」という話の中でも同様の話があります。

主人公たちはビートルズのコピーバンドをやっていて、
ある事件がきっかけでメンバー全員が
ビートルズデビュー前の日本にタイムスリップする、
という話です。

そこでバンドのフロントマンが
ビートルズのデビュー前に曲を出したらどうなるか 
俺たちがビートルズになるという形で
物語は進んでいくのですが、
メンバーの一人がかたくなに
ビートルズに成り代わることを拒否します。

その理由がオリジナルをコピーして近づけば近づくほど、
オリジナルから遠ざかる 
ビートルズに成り代わろうとすればするほど
ビートルズから遠ざかっていく。

ビートルズを真に愛しているならば、
模倣の音楽でデビューはできないはずだ、と対立します。

今回の話は料理と音楽 ジャンルは違いますが、

オリジナルを模索する芸術家に
共通する話であると言えます。

話戻って美味しんぼですが、
モレル氏は今回の食事会で
日本フランス料理界の底が見えた、
といわんばかりの発言をします。

これに反発するように山岡は噛みつきます。

「今度は俺にモレル氏を招待させてください」

その足で山岡はなじみのフランス料理屋へ行き、

フランスにかぶれてない料理人に
モレル破りのメニューを託します。

食材を求め長崎へ

ただし食材にはこだわる。

山岡の冒頭の会話にあった
究極のメニュー作りの基礎は本物の食材に
こだわるという点です。

日本で果たしてフランスの食材が手に入るのか・・・。

山岡は長崎へ飛びます。

そこでフランスの土壌と似ていて海辺の塩分を含んだ、
牧草を食べて育つ牛を探し当てます。

 出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
2巻4話より

 

日本の風土が薫る フレンチ

いざフランスの土壌に近い食材を使った、
日本人が作るフランス料理の勝負開始です。

キーワードは本国と同等の本物を使った
日本人の風土が薫るフランス料理です。

まず1品目は蒸しアワビの冷製です。

フランス料理では白ワインを使って蒸すところを
江戸前寿司の技法を使って蒸しあげたものを提供します。

その後もスープが続きます。

スープもウミガメから出汁をとったものかと
気づきますが、風味がわずかに違います。

答えはすっぽんでした。
今度は発想が逆でフランスの技法を使い
日本の食材で勝負します。

なるほどなるほど、
食材・技巧共に日本とフレンチの融合がテーマの今作、
見事です。

最後はステーキです。
そう、あの長崎で仕入れた和牛になります。

肉も見事、火の通し方も見事・・・
しかしそれ以上にソース・・・

モレル氏はこのソースの解読を試みますが
最後の一つのピースがどうしても嵌りません。

出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
2巻4話より

自分の舌に絶対の自信を持つモレル氏。
我慢できなくなり厨房へ走り出し、
ソースの秘密を教えてくれ、
その代わり星を用意する、と
最高の賛辞と共にソースの答え合わせを求めます。

ノン、教えられません 
ソースの秘密だけは

しかし、シェフの答えはフランス語でNoでした。

出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
2巻4話より

モレル氏は妙に納得します。

それもそのはず、なぜならフランス料理の命はソース。

ソースのレシピはシェフ以外門外不出なのです。

それを理解していたモレル氏は納得し、
今回の料理のテーマである、
フランス料理と日本の食材・技巧の組み合わせ、
そして何よりソースというフレンチ料理への
リスペクトに感嘆し、
山岡にも素晴らしい料理を堪能させてもらったと
賛辞を送り帰路につきます。

最後の最後まで謎となったソースの隠し味 
それはモレル氏はわかるはずもありません。
なぜならフランスには存在しない
日本のソース 「醤油」だったから。