漫画レビュー

【美味しんぼ】舌の記憶

美味しんぼを読んでみたいけど
「巻数が多すぎて読むのに時間がかかりすぎる」と
お悩みの方は多いのではないでしょうか。

そんな令和な人におすすめなのが、
本ブログの美味しんぼまとめです。

各回のまとめを覚えれば時間短縮はもちろん、
日常生活でするりと美味しんぼの名言を
活用することが可能になります。
もっと効率よく美味しんぼから蘊蓄を吸収したい方や、
大昔に美味しんぼを読んで記憶を取り戻したい方は
ぜひ参考にしてください。


今日覚えたい美味しんぼ

現代の鶏肉の供給現場が理解できること

養鶏場と平飼いの鶏肉は勢いが違うこと

本物の水炊きを食べると
ボケが解消すること

要点は抑えましたね、さあ行きましょう。

物語冒頭

今回の話では、初めて栗田ゆう子の家族が勢ぞろいします。

家族構成は
祖母 たま代と父・母
そして兄が一人いることがわかります。

祖母たま代は連れ合いの旦那とは死別してから、
徐々にボケが進行していました。
 
もはや孫の顔も思い出せない中、
昔主人と食べた「鳥玄」の水炊きが食べたいと言います。
 
それを聞いて家族全員で鳥玄へ水炊きを食べに向かう
ところから物語は始まります。

鳥玄を到着し、思い出の水炊きを注文します。
 
しかし、一口食べると祖母のたま代は
ここは鳥玄ではないといい癇癪を起こします。
  
出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
1巻9話より

後日、事の顛末を文化部で聞く文化部メンバー。

ボケによって破壊されてしまった
家族の団らんに同情の声が上がりますが、
山岡の視点は違いました。

本当にボケのせいなのか

そう呟き、
山岡は取材に行くと言い出し
栗田をあるところに連れていきます。
場所はそう、養鶏場です。

出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
1巻9話より

中に入ればここが工場であることがわかる、と
山岡は言い歩を進めます。

中は薄暗く、
まさに鳥が死ぬためだけに生かされる
生産工場の様相を呈していました。

低コストで大量の鶏肉を生成するために効率化された
資本主義がそこには広がっていました。

工場見学の帰り、
栗田は初めての光景に思考が混乱します。

今まで何気なく食べてきたものがどうやって
生産されているのかを直面したことにより、
これまでの食に対する考えが覆る衝撃を受けます。

山岡はそれに対して答えはしませんでした。

平飼いの鶏

次に向かった先は、
山岡が懇意にしているおマチばっちゃんの家でした。

おマチばっちゃんの家では
鶏は平飼いで伸び伸び暮らしていました。

工場で生産される鶏とおマチばっちゃんの鶏、
本当に同じ生き物なのか・・・

栗田はいまだ答えを出せずにいます。

しかし山岡はその答えは
既に君の祖母が出しているんじゃないのか、と促します。
先ほどまで黙っていた山岡、栗田へヒントを出します。

ハッとする栗田 

もしやたま代ばあちゃんは
本当に昔と鶏肉が変わったことに気づいて・・・

出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
1巻9話より

味覚・嗅覚と記憶の関係

再度、鳥玄にておマチばっちゃんの鶏肉を使った
水炊きを提供します。

最初は渋っていたたま代ばあちゃんでしたが、

一口食べるやいなやこれが鳥玄の味だと開眼します。

冒頭の登場時とは目に力がみなぎり、
ボケが治ったかのような闊達さを見せます。


出典:『美味しんぼ』
原作:雁屋哲・作画:花咲アキラ
1巻9話より


鳥玄の主人は今回の一件に言葉もありませんでした。

そして昔は農家から直接鶏を買い付けていたが、

今はそんな生産者もなく、
あったとしてもおマチばっちゃんのような
鶏を生産するには膨大なコストがかかり
商売にならないことを告げます。

しかし今回の件で鳥玄の主人たちは一念発起し
昔の味を再現するために再起を誓います。

人間の味覚・嗅覚には記憶と密接に
紐づいているという説もあり、
改めて食が人間の文化に根付いていることを
象徴するエピソードでした。

しかしここで勘違いしてはいけないのが、
養鶏場が悪、おマチばっちゃん鶏が善という
2極化で考えてはいけないところです。
鳥玄の主人然り、
時代は昭和のバブル全盛の時代という背景もあり、
人口は増え高度成長期という側面から
如何に効率よく安価で鶏肉を全国へ提供するかという
命題があったことも忘れてはいけない、
令和の我々にも問われる問題提起とも
捉えることができます。